障害者の介護保障を考える会のブログ

障害者の介護保障を考える会(ホームページ:http://kaigohosho.jimdo.com/)のブログです。例会のお知らせ、報告など。

毎日新聞記事

以下、毎日新聞の記事を転載させていただきます。

 

心の扉を開いて
共に生きる兵庫 第1部「地域で暮らす」/2 私たちの声届けよう 介護空白帯、自助努力でやり繰り /兵庫
毎日新聞2017年5月22日 地方版
https://mainichi.jp/articles/20170522/ddl/k28/040/319000c

障がい者の声を届ける会」発足初会合で、発言する障害者ら。(左から)堀之内さん、凪さん、迫田さん=神戸市長田区で、櫻井由紀治撮影

 今月12日、神戸市長田区に「障がい者の声を届ける会」が発足した。公的介護サービスを受けながら地域で暮らす障害者が、生活や命を守るために自分たちの声を行政に届けていく当事者組織だ。この日の初会合に、同区のシェアハウス「Re-Smile」(リ・スマイル)で1人暮らしをする、重度脳性まひの迫田博さん(40)の姿もあった。

 司会者から発言を求められた迫田さんは、手元の機器を操作して合成音声を流した。「(重度訪問介護の支給)時間数が足りないので困っています。どのようにしたらいいのかと思っていました」

 言葉を発することができない迫田さんは普段、文字を音声に変換する機器を利用する。会合開始30分前に車椅子で会場にやって来て、発言内容を一語一語、キーボードに打ち込み準備をしていた。

 障害者総合支援法に基づき、重度障害者に見守り支援を含めた生活全般の介護を提供する制度「重度訪問介護」。障害支援区分が6と最も重く常時介護を必要とする自分には、1日最大15時間の支給時間数では足りないと訴えたのだ。

 迫田さんだけではない。他にも、この制度を利用する4人の当事者が困窮する状況を訴えた。全員、重度の脳性まひだが、要望する介護時間数と実際に支給される時間数には大きな隔たりがある。いずれも、深夜帯の午後10時~翌朝6時までの間、ヘルパーが付かない空白時間帯が数時間あった。審査する神戸市は見守り支援について「単なる待機は認められない」という姿勢だが、当事者はこの空白時間帯に一人きりになってしまうことに不安が大きい。

 兵庫区市営住宅に1人で暮らす堀之内和弘さん(36)は血友病も患う。生活費は障害年金などで賄いながら、認められていない空白2時間分は自己負担をしてヘルパーに見守ってもらう。自己負担分の介護料は特別障害者手当月々約2万6000円を充てているが、全額支払えないので事業所に値引きしてもらい長時間介護を実現させている。それでも、堀之内さんは「これからも地域で生きていく」と決意は固い。

 障害年金と特別障害者手当で生活する長田区の凪(なぎ)裕之さん(44)も、貯金を取り崩して空白時間帯を自己負担する。自力では寝返りや体温調整ができない。多い月は10万円以上の出費となるという。借りている民間アパートの家賃の支払いもある。このままでは貯金も底を突いてしまうため知人らに頼み、深夜に無償で付き添ってもらうこともある。凪さんは「自己負担が気になって、やりたいこともやれない生活。それが情けない」と訴える。2人共、自助努力でやり繰りしたうえで成り立っている地域生活だ。

   ×  ×

 「施設から地域へ」。2003年度に国の障害者福祉は方針転換した。だが、障害者が地域で安心して暮らせるための公的サービス制度は十分ではない。自分たちが声を上げなければ社会は何も変わらないという思いが、彼らを突き動かす。

 神戸市によると、重度訪問介護の市内利用者数は280人(昨年11月末現在)。重度障害者を支援するNPO法人「ウィズアス」の鞍本長利代表は「声を上げられずに、我慢している仲間はまだ多いはず。当事者間のネットワークが必要だ」と指摘する。【編集委員・桜井由紀治】=つづく

 ※次回は6月5日掲載予定です。